「わたしを離さないで」感想・レビュー
原題:Never Let Me Go
発売日:2006/4/22
作者:カズオ イシグロ
■あらすじ
キャシーを中心としたルース、トミーの2女1男の人生の物語。
物語は3部構成になっている。
第1部:~18歳くらい?までの学校での物語
第2部:学校卒業後の介護士にむけての準備期間
第3部:介護士キャシーとしての構成
彼らが特別なところは臓器移植のための部品としての人間であり、そんな彼らがどのように生きて死んでいくのかが物語の主軸となっている。
■読んだ理由
WBSのスミスの本棚で精巧なロボットのアンドロイド設計者の石黒さんの おすすめの一冊だったので。
クローン人間の一生という、ある意味ダークな設定に惹かれた。
■感想
すごく丁寧で緻密に物語を構成しているのがとにかくすごいといえる。
文庫で400Pあまりだが、全てに目が行き届いていて自分たちにも当てはまるようなあるあるネタをうまく組み込んで物語に没入させようとしてくる。
エロゲライターで言うと、丸戸史明タイプといった感じがある。
主人公たちがクローン人間という、一種のサスペンス的なところもあるけど、実はそんなにそれは重要視してないのではと思う。
序盤からもそういうのにピンとくるい人はすぐわかるし、物語の前半の終わり頃に普通にバラされる。
臓器移植でわりかし早く死ぬようで、おそらく30後半にはだいたい死んでいるようだ。
しかしながら、自分もいつかは死ぬと考えると、彼らの行動は決して特別なものではなく自分にもあるものなのかなと思う。
最後のほうでマダムのところに行った時に特別の恩赦みたいなのはないといったあたりも、人生にそんな点から幸運が降るのはないと皮肉めいているように思える。
努力ではどうしようもできない生まれや環境に対して、 どう折り合いをつけて生きていくかというのを考えさせられる作品。
今後、この物語のように臓器を人間単位でコピーして作ることが可能な時代になったら、クローン人間は人として生活させてもらうことは可能だろうか。って思った。
実際は火の鳥であったような、人殺しゲームの駒とかにされるんだろうな。
人間は見えないものに対して鈍感だしね。
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